ヒーハー!合唱 (その3)

さて、「ヒーハー!合唱 映画と合唱~その3」 です。

今回取り上げるのは2004年製作のスウェーデン映画歓びを歌にのせてです。

歓びを歌にのせて - 作品 - Yahoo!映画

これまでに取り上げた二つは子供の合唱団のお話でしたが今回のは大人の合唱団が出てきます。

実をいえばこの映画は観た方はわかると思いますがあまりあらすじを紹介したくないのです。特にラストシーンは。しかしながら「映画と合唱」というテーマで取り上げた以上、ほんのさわりだけご紹介しておきましょう。

 

主人公は音楽の神髄を求める天才指揮者ダニエル・ダウレス(ミカエル・ニクヴィスト/スウェーデン版「ミレニアム」シリーズでおなじみ)は、突然本番のステージで心筋梗塞を起こし倒れ、一線を離れる。絶望し音楽から離れることを決意したダニエルは幼少期に過ごした故郷の寒村に数十年ぶりに戻り静かに暮らそうとするのだが、彼が高名な指揮者であることを知る雑貨店の主人から村の教会聖歌隊の指導を頼まれる。一旦は断ったダニエルだがふと練習に出向いたときの村人の熱い眼差しにほだされ、指導を引き受ける。これまで指導者がいなかった聖歌隊はメンバーも雑多で、多くの団員がそれぞれの悩みや孤独を抱えながらかろうじて声を出しているような状態でおよそ合唱団としての態を成していなかった。ダニエルはまず全員にリズムを感じさせ、踊らせ、呼吸を合わせることから始める。なかなか歌を歌わせないダニエルのやり方に、旧来の考え方を変えられず不信感を抱く者もいたがダニエルは気に介さない。徐々に団員たちの心を掴み、上達した聖歌隊は村でコンサートを開くまでになる。聖歌隊はメンバーを増やし、ダニエルの存在感が増すにつれ、教会の牧師は嫉妬を抱き彼を疎ましく感じるようになる。他の村人との壁が徐々に拡がり始める・・・。

 

聖歌隊のメンバー設定がとてもよくて、洋の東西を問わず身近な合唱団にもこんな感じの人いるよね~と思ったりします。
音楽にまったく理解のない酒乱の夫からのDVにおびえながら練習に参加し続ける女性。偏狭な村の中で「君臨」する牧師の屈折した心に辟易するその妻。商売人で面倒見もいいが、幼馴染をずっと「太っちょ」と馬鹿にしてきた聖歌隊のリーダー。ダニエルの指導についていけず、ダニエルが村人を「洗脳」しようとしていると牧師に告げ口をする元指導者。永年、幼馴染の女性メンバーに焦がれながら告白できずにいる初老の男。
そんなごく普通の(あまり普通じゃない?)人々が、ダニエルによってこれまで感じたことのない音楽の愉しさに目覚め、生き生きと変化していく姿を目の当たりにして保守的な人々が恐れを抱くようになるのは当然のことかもしれません。
後半、さまざまな障害を乗り越え合唱コンクールへの出場を決めた合唱団(この頃には牧師によって聖歌隊は解散させられている)が会場に向かう貸切バスに乗り込む姿はまるでピルグリム・ファーザーズのよう・・・。
私は個人的には合唱団が妙に宗教化してしまうことをまったく好みませんが、「まっとう」で人間的なのはどちら?という意味ではバスに乗り込むほうでしょう。

合唱をやってる人にとってはダニエルが最初にやらせる全員が手をつないで輪になって手拍子足拍子でリズムを合わせるとか、寝転がって互いのおなかに頭を載せて呼吸を感じるとかはあまり違和感はないですが、合唱に縁がない方にとっては「新興宗教の儀式か?!」と思う人もいるかも。

 

というふうに書いていますように、この映画で描かれる合唱の比重はかなり大きいのです。で、冒頭に述べたように詳しく書きませんがラストの10分間の描き方は衝撃的ともいえる合唱の神髄に迫るものであり、それこそがダニエルが求めてきたものだったといえるでしょう。このラストシーンでのダニエルの微笑みが原題の「As It Is In Heaven」につながるのだと納得しました。

さすがは合唱大国スウェーデン映画と言わざるをえません。

 村でのコンサートの中で夫からのDVに苦しむ妻ガブリエラがダニエルが作った曲を歌うのですが、その歌唱が圧巻!演じるヘレン・ヒョホルムさんはスウェーデンを代表する人気歌手なのだそうな。


Gabriellas Song - Wie im Himmel

 ・・・生きている歓びを心から感じたい
 私に残されたこれからの日々を思うままに生きよう
 生きている歓びを心から感じたい
 私はそれに価すると誇れる人間だから・・・

 

余談ですが映画コメンテーターのLiLiCoさんは本作品を「生涯ナンバーワン!」と絶賛しています。彼女もスウェーデン出身ですもんね(^^♪

 

 

比較的にDVDは見つけやすいかと思います。機会があれば是非。

というわけで「ヒーハー!合唱 映画と合唱~その3」おしまい。

また貯金ができたらお会いしましょう!