いろいろと考えさえられた映画でした。
ソウル・R&B・ゴスペル歌手アレサ・フランクリンの伝記映画。
全く知らなかった少女時代の出来事、父親や夫とからの性差別ともいえる抑圧、さらに自身の奔放な男性関係、アルコール依存などが赤裸々に描かれ、それはかなり衝撃的であります。
しかしそれら全てを払拭させてしまうアレサの圧倒的な歌声。
アレサ・フランクリンの教会でのコンサート(名目はミサ)を描いたドキュメント映画「アメイジング・グレイス」のことを以前記事にしました。
「リスペクト」の後半、この「アメイジング・グレイス」を撮影するシーンがドキュメント「アメイジング・グレイス」の雰囲気そのままのザラっとした映像感で描かれます。このまま「アメイジング・グレイス」に突入してもよいかと思うほどに。
「リスペクト」の主演ジェニファー・ハドソン。
歌手であり女優であり、生前のアレサから自伝映画が作られるなら彼女に、と託されていたという話も聞きます。
ほとんど何の情報を得ずに勝手な想像で書いていますが、ソウルの女王であるアレサの役を演じるのはグラミー賞受賞者である彼女にとっても相当な高いハードルだったでしょう。歌い方や話し方や佇まいなどめちゃ研究したことでしょう。
両者の顔が似ているとは思いませんが、歌唱に関してはかなり肉迫しているんだろうとは思うのですが・・・。
「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ役のラミ・マレックは顔を寄せていた。
「ロケットマン」のエルトン役のタロン・エガートンは顔はエルトンよりハンサムだけど歌も頑張っていた。
でも彼らは俳優であって歌手ではない。その点、ジェニファー・ハドソンは一流のシンガーであるだけに難しかっただろうなあ。よくオファーを受けたなあ。と思う。
怒られるかもしれないが(誰に?)楽器に例えるならアレサの声をコントラバスとするならばジェニファーはヴィオラか。どちらに優劣はもちろんありません。音の質とボリューム感がまるで違うのです。
エンドロールで2015年のケネディ・センター名誉賞受賞式の様子が出てきます(途中で席を立っちゃダメよ)。堂々たる貫禄の73歳のアレサがステージに現れ、その年の受賞者の一人であるキャロル・キングの「ナチュラル・ウーマン」を弾き語りで歌いだします。
「リスペクト」の中でジェニファーがすごいパフォーマンスを見せている、特に先述の「アメイジング・グレイス」撮影中のシーンで歌われる「アメイジング・グレイス」は本当に素晴らしいとも思う。なのに・・・。
「ナチュラル・ウーマン」を歌いだしたアレサの「波動砲」のごときひと声に圧倒されてしまうのです。オバマ大統領も涙ぐんでいる(*_*;
あんなに熱演、熱唱したジェニファー・ハドソンが一瞬でかすんでしまったと思うのは僕だけでしょうか。
まあ、それほどにアレサ・フランクリンという人の不世出性が突出しているということなんだろうけど。