古(いにしえ)の王子と3つの花

映画『古の王子と3つの花』オフィシャルサイト

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4年前に記事にしていた「ディリリとパリの時間旅行」と同じミシェル・オスロ監督のアヌメーション映画。

これも1週間で上映が終わってしまいましたので慌てて観に行きました。

古代エジプト、中世フランス、18世紀トルコ・オスマン帝国の3世界を舞台に3つの恋と冒険のお話が描かれます。

古代エジプト編「ファラオ」はルーブル美術館とのコラボとあって、華麗なエジプト美術をそのまま大画面に置き換えて、登場人物は「正面を向いた胴体、横向きの顔、固定した両足」というスタイルで押し通しています。こんな感じね。

エジプト美術|美術用語解説 | media.thisisgallery.com

ここで現れる王子はエジプトの南(今のエチオピアあたり)にあったクシュ王国の3代目の王ピイ(ピアンキ)と思われます。エジプトの王女に恋をしたピイは「ファラオ」となって王女を妃として迎えるためにエジプトに進軍、これを制圧してエジプト第25王朝を建国したと伝えられます。

ヴェルディのオペラ「アイーダ」でエジプトと敵対するエチオピアのモデルがこのクシュ王国なんですって。(byウイキペディア)

徹頭徹尾、平面的に描かれていますがきらびやかでエキゾティック!

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アンリ・ルソーの絵みたいですね。

 

中世フランス編「美しき野生児」は打って変わってほぼ影絵で登場人物の表情は目の動きしかわかりません。中世暗黒時代のイメージでしょうか。

独裁的な領主を父に持つ王子は理不尽な理由で牢獄に囚われていた公爵からその愛らしい娘のことを聞かされ、公爵を逃がしてしまう。怒り狂った父領主は王子を森で殺害するように家来に命じます。純粋な王子を不憫に思う家来は王子を生かし、森でに逃がす。王子は森の中で逞しき野生児として城に凱旋、家来は次々と領主から去り、同時に城に攻め入った公爵の助けで王子は王となり、美しく成長した公爵の娘と結ばれるというお話。

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映像は平面的といえば平面的ですが、影絵の黒がとんでもなく効果的で美しく、ビアズリーの世界のように濃密に感じられます。

 

オスマン・トルコ編「バラの王女と揚げ菓子の王子」はこれまた豪華絢爛な世界。

クーデターで王宮を追われた美形の王子が別国に逃亡、たまたま職を得たのが揚げ菓子の店。揚げ菓子職人としてシナモンを加えて独特の味付けをしたらこれが大当たりし、王宮の姫のもとに届けられる。出会った二人はすぐに惹かれ合うが、王女と元王子の揚げ菓子職人では身分が違う。王宮の中の廃墟で密かに逢瀬を重ねるが、王に見つかってしまい二人は死刑!を言い渡され牢獄に監禁されるが、王子の機転でそこを逃げ出しキャラバンの隊列に紛れ込んで都を脱出するも、砂漠で盗賊に襲われる。が、逆に二人の活躍で盗賊たちを駆逐したことで二人はキャラバン隊の王子と王女となりラクダの背に揺られて旅をする・・・

という話です。

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今も売られるトルコの揚げ菓子「ロクマ」。美味そうだ。

 

フランス・ベルギー合作のこの映画は、ストーリー的にはたわいもないのかもしれないし、言ってみれば動く絵本と言えなくもないかもしれません。

ま、マルチバース大流行りの時代にこんなに美しい絵物語をじっくりのんびり見てみるのもいいでしょう(^_-)-☆

 


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