聖堂には確かに音が鳴り響いているにもかかわらず静謐の中に身を置いている。
3月26日。
第11回JCAユースクワイアコンサートの場で私はそう感じていた。
ラトビアから生まれた作品群は実直な祖国愛と共に自然と神への確かな信仰にあふれていた。それは松原千振先生の的確明晰な指揮とそれに応えるユースクワイア(以下YC)の清冽な歌唱から泉のように滾々と生まれ、瞬時に消えていく。その儚さが愛おしく、だからこそ限りなく美しい。
私が感じたのは大いなる情熱に満ちた静謐だった。
思えば2月6日の開場下見の時から既に松原先生はそのイメージを持たれていたのかもしれない…。
3月22日、コーラスキャンプ初日。幾ばくかの緊張がある中、「コロナに一番悪いのは笑うこと」と初顔合わせで言われた先生の言葉にメンバーに更なる緊張感が。しかしキャンプが進むうちに先生はちょいちょいギャクを言われる。
次第に想いがひとつになり、メンバーからも質問、確認の積極的な手が挙がる。
その全てに明快に答える松原先生の中に揺るぎのない音楽があることをあらためて確信する。
合宿形式を避け、日本人指揮者によって、音楽ホールじゃなく教会でのコンサートというJCAYC初の挑戦はこうして最終日を迎えた。純心女子高等学校音楽部(指揮:松本佳代子先生)による歓迎演奏は地元贔屓では決してなく「長崎の子が伝える使命」を見事に表現し思わず目頭が熱くなるものだった。その演奏は少なからずYCの演奏にも相乗効果を与えたように思える。
僅か5日間のミッションの中に、指揮者と歌い手が作り出す音場は生まれる度に異なり、二度と同じものはない。今回の再現を求める必要もないし、そもそも不可能なことだ。今回の35人の若者たちは既にまた違う儚い美しさを求めて前に進んでいるだろう。今回のJCAYCが彼らの輝く歩みへのひとつの契機となったなら開催県連としてこれ以上の歓びはない。