ヤウナ・ムジカ(リトアニア)演奏会に行ってきた

アルカスSASEBOで開催されたヴィリニュス市合唱団ヤウナ・ムジカ(リトアニア)演奏会に行ってきました。

www.min-on.or.jp

 

結論をいうと・・・

めちゃめちゃ良かった!

リトアニアという国はいわゆる「バルト三国」のひとつ。

バルト三国は世界有数の合唱大国というのは御周知のとおりです。

バルト海を挟んでスウェーデンフィンランドと向かい合うこれらの国が輩出したトルミスやエセンバルズの作品でもわかるように北欧の静謐さや煌めきと、民謡を基に合唱芸術に昇華された豊かな民族音楽が根付いているように思えます。

私は知らなかったのですが、そのリトアニアでもトップクラスの合唱団が「ヤウナ・ムジカ」なのだそうで、倉敷の有名合唱ブロガー、文吾さんが日本公演初日の倉敷公演のことを記事にされていて

bungo618.hatenablog.com

 

平日(金曜日)の夜公演に仕事早退して長崎から佐世保へ走りました。

失礼ながら「お客さん、入るんやろうか」とちょっと心配していたのですが、なぜか(^-^;続々とお客さんが・・・杞憂でした。

 

文吾さんの感想とかぶるところもあるかもしれませんが私なりの感想を。

大きく感じたことは、このプログラムを日本の優秀な合唱団が演奏したときに、これほどの心地よさを感じられるだろうかということでした。

同じプログラムで日本の優秀な団体と聴き比べることは不可能なのですが、ヤウナ・ムジカの演奏にある余裕や音楽の楽しみ方は僕らの手には届かないような気がするのです。そしてそれはきっと合唱の存在そのものが彼の国々とは違うからなのだろうなと。

良い悪いというものではないのですが、それが心地よさに繋がるものであるなら学ぶべきものは大いにあると。

 

第1部の「リトアニア民謡」は編曲のすばらしさももちろんあり、どれも聴きごたえのある合唱作品。

3月に長崎で開催されたJCAユースクワイアで松原千振先生が取り上げられたラトビアの民謡とも似た音空間で、さまざまな民族楽器(ちっちゃいベルとかタンバリンの太鼓だけのやつとか笙のちっちゃいやつ(のように見えた))をメンバーが伴奏として使ってました。(ちなみにプログラムの曲目解説は松原先生によるもの)

ピアノ伴奏とひと味違う合唱の多様性が十二分に表現されたステージで、これもまた日本ではなかなか聴くことのないものでした。

 

第2部「西洋と日本の傑作集」ステージはさらに圧巻!

メンデルスゾーンの「3つの詩編 作品78より詩編2番」はロマン派の朗々たる響きという感じとは違って北欧的な柔らかさを持つ不思議なグルーヴ感があり、非常にスマートな演奏で惹き込まれました。

エルガーの「永遠の光」(エニグマ変奏曲)のカタルシス!決して押しつけがましくなく、終始冷静にどこまでも美しく歌われることはあまりないかも。こんなふうに歌えたら楽しいだろうなあ・・・。バーバーの「アニュス・ディ」を彷彿とさせる名曲。

トルミス(エストニア)の「歌の懸け橋」、エセンヴァルズ(ラトビア)の「ロング・ロード」。それぞれ全く違う世界観をもつ2曲の歌いわけがまた見事で、この合唱団の実力をあらためて思い知らされます。

最後はいよいよ日本の合唱曲、間宮芳生「合唱のためのコンポジション 第1番よりⅢ、Ⅳ」と大中恩「草原の別れ」!

コンポジション」が鳴り出した瞬間、「え?これって北欧の曲?」と思わせるような和音の拡がりに鳥肌がたちました。

日本の合唱団が間宮さんや柴田南雄さんを歌うとどうしても西洋音楽と一線を画すぞ!みたいな意気込みが出ちゃうと思うんです。日本古来の民謡や俗謡を題材として作られた曲だとなおさら。

それをヤウナ・ムジカは世界の中のひとつの曲としての捉え方でしょうか、バルトの民謡由来の曲との共通性なのでしょうか、余計なものをそぎ落として、ただそこに音楽があるというような音場。びっくりしてしまいました。

「Ⅳ」でのソリストさんのコミカルな表現も過不足なく自然に受け入れられる。

この「コンポジション」、間宮先生が聴かれたらどう感じられるのかがとても興味深いです。

 

そして「草原の別れ」。

こないだの九州合唱コンクールでこの曲をかなり聴きました。どの団もとてもしっとりと、しかも決然と歌われていて素晴らしかった。

ちょっと話が逸れますが、昨年末に今年度の課題曲が発表されたときに「え~~~!?草原の別れ~?(@_@。」と思った方は多かったはず。

しかし、九州大会での演奏を聴いているうちに「あ~これはアリだったな」と思いました。譜面ズラは簡単に見えて、多くの人が知っている、愛唱曲的な曲をそれぞれの団がどう個性を出して表現できるか。「課題曲」の目的に見事にマッチしているのかもしれないなと。今後の課題曲選曲の傾向がどうなるのかはわかりませんが、ひょっとしたらこの路線が続くかもしれませんね(^^♪

 

で、ヤウナ・ムジカの「草原の別れ」。

あまりに素晴らしくて涙腺が完全に緩みました。なんでこんなに日本語で情感を出せるの?!

 

確かな音感と、完全にコントロールされた一人一人の発声に支えられ、なめらかで美しいアウグスティナスさんの指揮によって「ヤウナ・ムジカ」は見事なコンサートを終えました。ふだんそこまで合唱に接していないのでは?と思われる多くの聴衆がスタンディングオベーションをするほどのコンサートでした。

(アンコール曲も含めて)日本の曲をこれほど完璧に練習してきてくれたことに感謝。

 

高速を走りながらずっと考えました。

なんでこんなに素晴らしいと思ったんだろう。僕らが目指すべき合唱って何なんだろう。

ヤウナ・ムジカのメンバーの柔らかな顔を思い出しながら、幸せだけど少し複雑な気分で長崎への帰途につきました。

 

 

こんな動画がありました。


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