ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。
先にちょっとだけプレビューを読み、トレーラーを見て、これは気楽に見れる映画じゃないぞとわかっていたので映画館に行くのを少し躊躇っていたのですが・・・。
予想通り。
159分というなかなかの長尺の中で、ケイト・ブランシェット(以降CBと略す)が映らないシーンがほとんどないという稀有な映画。
冒頭の対談シーン(台詞の量が半端ない)からCBの存在感に圧倒される。
「指揮者は時間を支配する」
演奏する立場から言うと、私もそのことはかなり意識していて、「音楽」=「時間芸術」という概念を持ってました。
しかし、それが「神の領域」とまでは思ってなかったな。
CB(ター)がそう語ると、「きっとそうなんだな」と納得させられてしまう。それほど音楽、指揮者を語るターの表情と言葉には揺るぎない自信に裏打ちされた説得力がある。ここだけでCBの凄さが充分わかってしまうのだ。
そこから映画は学生に対する講義やオーケストラ(どうも設定としてベルリンフィルのようだ)とのリハーサルと進むうちにターをとりまく状況はどんどん怪しくなってくる。
怪しいままずっと映画は続くので、こちらの集中力の消費も半端なくて。
この映画をどう読み解くのかはもちろん個人の勝手なので評価も様々と思うけれど、とにかくマーラーの五番を振るCBの指揮は見事としか言いようがない。
ストーリーを抜きにしてCBが振る「マラ5」全曲を聴いてみたいとさえ思ったし、CBじゃなくミシェル・ヨーでほんとによかったのか?と個人的には強く思ったのでした。