舞台はオクラホマですから「西部劇」とは言えない気もしますが・・・。
3時間26分という最近珍しい長尺ながらさほど長さを感じさせないのですが鑑賞前の水分は控えたほうがいいかも。
これも前情報無く観て、「実話ベース」というのは後に知ったのです。
いわばアメリカの「黒歴史」のひとつを丁寧に描いているのだと思います。
荒野に噴き出す黒い液体、その周りで歓喜に踊るネイティブ・アメリカン(今、インディアンという言葉は使っちゃいけないのかな?)たち、険しい表情のデカプリオ、意志の強さを感じさせる眼差しのグラドストーン、微妙に苦い表情のデ・ニーロ。このチラシを見るだけで何となく映画の雰囲気が浮かび上がります。(観た後だからそう思うのか)
「フラワームーン」というのは元々そのネイティブ・アメリカン族の中で使われる5月の満月を表す言葉だそうで、毎月の満月にはそれぞれ自然と結びついた〇〇ムーンという名前があるようです。
本来の生活地を追われ、たまたま居住区となったオクラホマで原油が出たことによって石油利権というとんでもない財産を手にしたネイティブ・アメリカンに起こった悲劇が細かに描かれて、じわじわと寒気と憤りが湧いてきます。
冷酷な犯罪に手を染めてしまうダメ男を演じるデカプリオの表情が時にマーロン・ブランドに激似だなあと。意識的かどうかはわかりませんが、そういえば1973年のアカデミー賞授賞式でのマーロン・ブランドの主演男優賞受賞拒否(「ゴッドファーザー」)事件を思い出してしまいました。
ブランドの代理として出席したアパッチ族出身の女優サチーン・リトルフェザーがブランドが受賞を拒否することをスピーチした。詳しくはこちら。
原作は「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死とFBIの誕生」というフィクションですので珍しく(?)やる気に満ちた連邦捜査官が事件を明らかにしていきます。
「ザ・ホエール」でアカデミー主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーも贅沢な使い方で出演。ジョン・リスゴーは気付かなかった(^-^;
リリー・グラドストーンの佇まいは美しく、唯一「善人」を演じるにふさわしい。
それにしても映画館はほぼ貸し切り状態でした。
こんな長い映画は映画館で観たほうがいいのにと思うのですが。