潜水艦クルスクの生存者たち を観た

2018年制作らしいこの映画が今公開されているのは間違いなくウクライナ情勢に関連してのことでしょう。

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2000年8月12日に起こったロシアの原潜クルスク号の沈没事故を基にした映画。

制作したのはフランス・ベルギー・ルクセンブルグルーマニア・カナダ・アメリカなのでいわゆる「西側」の視点から描かれた映画となるわけですが、数年にわたる事故調査結果を踏まえてのものでしょうからある程度事実=真実なのだろうと思います。

 

で、感想としては

これは「ロシア」だから起こったのかもしれないが、もしかしたら他の国でも起こりうることかもしれないという教訓とすべき悲劇を描いている、といえばよいのかもしれないけれど、ぶっちゃけていうとロシアの国体にやっぱりおかしいよね、こんな国体にはなりたくないよねという印象を持たざるを得ないのです。

クルスクの乗艦員たちは艦長以下、家族ぐるみで結束力のあるごく善良な市民であることが映画冒頭で描かれます。若い乗組員の結婚式の様子は「ディア・ハンター」でのそれを思い起こさせます。国家からの給与もまともに支払われず、決して恵まれた境遇ではない中、国への忠誠をもって軍事訓練に臨んだ末の事故により彼らは命を落とすのです。

最新鋭の大型原潜でありながら資金不足のため訓練も不足、非常時のための装備もいいかげんだった、ということも調査でわかっています。

自国の装備では乗員を救出できず時間だけが過ぎてゆく中、原潜機密保持を優先するために、他国から差し伸べられた救出協力も拒んだことも事実。

事故発生時に大統領は避暑地で休暇中で、報を受けてもモスクワに戻らなかったというのも事実。

乗員の家族に対する説明会の場で、軍部の欺瞞に満ちた説明に異を唱え激しく詰問した女性を拘束しその場で何らかの注射を打って意識を失わせた、というのも事実。

 

限られた情報しか現れませんが今のロシアの兵士たちが置かれた状況は当時と変わっているのでしょうか。

国家は善良な市民に真実を伝え、生命を守ることを最優先としてくれるのでしょうか。

一刻も早くかの国が変わってくれることを、ウクライナに平穏が戻ることを願いつつ映画を観ていました。


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名優マックス・フォン・シドー(「エクソシスト」で悪魔と対峙中に心臓まひで死んでしまうメリン神父役)の遺作ともなったこの作品。長崎セントラル劇場で5月26日まで。